【レビュー】創造小屋 卓上用スピーカースタンド(パイン集成材モデル)

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構造・仕様

 創造小屋の卓上用スピーカースタンドで、パイン集成材モデルの価格はペアで12,100円。選択した色によっては少々価格が上乗せされる。

創造小屋 卓上用スピーカースタンド パイン集成材モデル カラー:ブラックステイン

 木材にブラックウォルナット無垢材を使ったモデルもラインナップされており、こちらはペア27,170円。両モデルともある程度の範囲内であれば同価格でサイズオーダーが可能となっている。

 私はデスクトップオーディオにおける比較的エントリークラスのブックシェルフとの組み合わせを想定して、横幅160 × 奥行200 × 高さ120mmでオーダーした。

 虚飾を排した質実剛健な構造で剛性感は極めて高く、手頃な価格でありながら柱内部に珪砂を入れて振動対策を図るといった工夫もされている。デスクトップオーディオはもちろん、テレビラック/ボードに置いて画面とスピーカーの高さを合わせる用途にも使える。

運用

 天板はネジ等が一切露出しない平坦な仕上げとなっており、インシュレーター等との組み合わせもしやすい。

ブラックステイン仕上げでも「完全な真っ黒」にはならず、それなりに木目は透ける

 スタンド底面は天板同様平坦で、机やラックにそのまま置くと面同士の接触でガタを生じる可能性があるため、何かしら設置の工夫をした方がよい。私はひと山いくらで買えるフェルトパッドを四隅に貼り付けた。滑り止めを重視するならシリコンパッド等が適している。

買ってすぐに傷を付けてしまったようだ……

 本製品は高さは200mmまでサイズを選べるため、特に小型のブックシェルフをかさ上げする用途にも向いている。高さを稼げるという意味ではISO Acousticsの「ISO-STAND」シリーズも同様だが、そちらに対して創造小屋のスタンドは(見た目も含めて)安定感で圧倒的に勝る。

 参考までに、ISO Acoustics Aperta Aluminum・創造小屋のスタンド(横幅160 × 奥行200 × 高さ120mm)と、Paradigm Monitor SE Atomを組み合わせた写真を貼る。

音質

 創造小屋の卓上用スピーカースタンドは「デスクトップオーディオに好適な卓上用スピーカースタンド」として、立ち位置的にISO AcousticsのApertaと真っ向から競合するため、音質の検証は両製品の比較を軸に行った。主たる音源は私の長年のリファレンスであるCorrinne Mayの「Angel in Disguise」を用いた。

 なお、私はガタつきや振動の観点から「大きい面と面の接触」をなるべく避けたい人なので、写真の通り創造小屋のスタンドはオーディオテクニカのインシュレーター「AT6098」(生産完了になってしまった……)を三点支持で組み合わせている。これでもトータル金額はApertaよりも安上がりである。

 まずApertaだが、「聴いていて不満はない」という印象が真っ先に来る。実売5万円のブックシェルフスピーカーから、こんだけ満足のいく音が、しかもデスクトップオーディオという制約まみれのセットアップで出てくることを考えれば、素直に万々歳である。ピアノがもっとシャープに鳴ってほしいとか、低音がもっと引き締まればいいなぁとか、言おうと思えば確かに色々と言えるが、それは同時にMonitor SE Atomの「耳馴染みの良さ」や「ふくよかさ」に繋がる点でもある。よって、スピーカーの持ち味をきちんと発揮させるスタンドとして、総じて不満はない。もっとも、組み合わせるスピーカーがPersona Bクラスになると、わずかに音のエッジが丸くなるという印象になってくるわけだが……

創造小屋の卓上用スピーカースタンドとParadigm Monitor SE Atomのセットアップ

 創造小屋のスタンドは、Apertaに比べるとだいぶ「カッチリ」している。ピアノは研ぎ澄まされ、ボーカルや楽器の立ち方、コーラスの分離も明らかに良くなる。低域の締まりも幾分向上する。その一方で空間は一回り小さくなり、良くも悪くもApertaが聴かせた「おおらかさ」は薄れ、全体的に生真面目な音、といった印象が強まる。フレームの素材にアルミニウムを使っているApertaでこの印象なのだから、レギュラーのISO-STANDではいっそう違いが大きくなるだろう。

 インシュレーターと組み合わせている時点で必ずしもスタンド単体の音とは言えないにせよ、創造小屋のスタンドはApertaと比較して、よりオーディオ的な能力の高さを感じさせる。というより、各種インシュレーターとの併用が容易なことも含めて、よりオーディオ的な面白さに満ちている、と言うべきか。

まとめ

 設置の安定感という点では、創造小屋のスタンドの単純明快な構造と重量による安定感は、ISO Acoustics Apertaの吸着による安定感をトータルでは上回る。サイズをある程度自由にオーダーできることも安定感に寄与する。

 設置の自由度という点では、単に載せる以外にないApertaに対し、創造小屋のスタンドは平坦な天板&底面によって様々なインシュレーターを組み合わせる余地がおおいにある。ただ、同時に「そのまま置いたのではガタつきや振動などの問題が生じかねない」という懸念もある。

 総じて、「設置に際して角度の調整以外あまり考える必要はないが、それでいてしっかりスピーカーの能力を発揮させる」Apertaに対し、「設置に際して少々気を使う必要があるが、そのぶんスタンドとしての基礎性能が高く、オーディオ的な面白さも楽しめる」創造小屋のスタンド、というイメージである。パイン集成材モデルでこの結果なので、重量と強度(とありがたみ)で勝るブラックウォルナット無垢材モデルにすれば、さらなる効果も期待できるだろう。

 創造小屋の卓上用スピーカースタンドは、音質を含めて、当初思っていたよりもずっと優れた製品だった。【本気のデスクトップオーディオ】という企画を始めるうえで、デスク設置用のスタンドとして定評のあるISO Acoustics製品をとりあえず買い求め、実際にその完成度の高さには感心したが、必ずしもISO Acousticsにこだわる必要はなかったかな、と今になって思う。ゴムの跡も付かないし……
 
 

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