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LINN DSがTIDAL Maxに対応
約一か月前にLUMINが一番乗りで対応したのに続き、LINNのDSがDavaar 103 Build 516 (4.103.516)にてTIDAL Maxに対応した。
LINNは私の指摘とは異なる視点から、MQAに公然と疑義を呈した数少ないオーディオメーカーのひとつである。LINNは自社のネットワークプレーヤー/DSへのTIDALの統合自体はいちはやく行ったが、それはそれとしてTIDAL Masters/MQAには賛同できない、という冷静な対応だった。
月日が経ち、MQAの経営破綻が報じられ(現在はレンブロックに買収されている)、間を置かずTIDALがFLACでのロスレス/ハイレゾ配信を開始すると発表された。
夏には実際に「TIDAL Max」の名でロスレス/ハイレゾ配信が始まったが、この段階ではTIDAL公式アプリのみの対応となり、その他の製品は2023年後半~という案内がされた。
そして10月にLUMINが対応を果たし時点で、TIDAL Maxがオーディオ機器と統合される土台が整ったことが明らかになった。
LUMINの他に先駆けた「世界初」という、いわゆる時限独占がどの程度続くのかということだけが気になっていたが、今回LINN DSがTIDAL Maxに対応したことで、今後続々と他社製品にも対応が広がっていくものと思われる。
LINNが問題視したのはあくまでもMQAであって、TIDALが方針を変えてFLACによるロスレス/ハイレゾ配信を始めるのなら、そりゃもう対応しない理由はない。
実際に使ってみた
さて、今回のアップデートは当然ながら、十年以上前に発売された私のMAJIK DS-Iにも適用される。さすがはLINNであり、さすがはDSである。
というわけで、LINN DSで再生するTIDAL Maxがどのようなものか、一通り試してみた。
従来の「Konfig」からリニューアルされたDSの設定画面で「MUSIC」→「TIDAL」を覗いてみると、「Audio Quality」が「Hi-Res (up to 192Khz, 24bit)」となっており、明らかにTIDAL Maxに対応しているのがわかる。
で、実際にTIDALを使って192kHz/24bitの音源まで再生できた。
ただ、いくつか問題、ないし難点も存在する。
まず、MAJIK DS-IでTIDAL Maxの192kHz/24bitの音源を再生すると、ほぼ確実に10秒程度の間隔で音切れが起きる。我が家の回線の問題(夜間は露骨に回線速度が低下する)かと思って朝昼晩と時間を変えて試してみたが、状況は変わらず。ちなみに96kHz/24bitの音源では音切れは起きない。
これがDS側に起因するのか、それともTIDAL側に起因するのかは判断材料が少なく判然としないが、TIDAL公式デスクトップアプリでも192kHz/24bitの音源再生時に時折音切れが起きるので、後者の線が濃厚な気がする。後者の場合、96kHz/24bitの音源では音切れが発生しない以上は通信負荷が原因だと思われ、なんてこった、「圧縮してファイルサイズを小さくできるから通信負荷も小さくて済む」というMQAの(今となってはほとんど誰も気に留めない)メリットが真実味を帯びる。
なお、Amazon Music公式デスクトップアプリでは192kHz/24bitの音源を再生してもこのような音切れは起きない。
また、TIDALの音源をブラウズ時に、「どの音源がハイレゾなのか/ハイレゾではないのか」を判別できない。
例えば下のスクリーンショットはLINN Appでイーグルスのホテルカリフォルニアを検索しているシーン。『ホテルカリフォルニア』が2種類あり、どちらがハイレゾなのか判別できない。
さらに、LINN Appはアルバムの中身まで下りると本来なら音源のスペックに応じて「CD」「HD」と表示されるのだが、TIDALの音源については中身がハイレゾでも「CD」としか表示されない。
もっとも、Amazon Musicや対応製品も同様の問題を抱えており、TIDALやLINNだけを指摘するのはフェアではない。いずれにせよオーディオファンにとってはなかなか面倒な状況ということは事実である。
要は、Roonみたいになればうれしい。それはそれとしてRoonのTIDAL Max対応はまだか。
他にもTIDAL公式アプリとDSとRoonを横断して使った際に気になった点はいくつかあるが、DS側ではなくTIDAL側(TIDAL MastersからTIDAL Maxに移行する際のゴタゴタ)に起因すると思われるので、この記事ではそこまで突っ込まないことにする。
まとめ
LINN DSがTIDAL Maxに対応し、TIDALでロスレス/ハイレゾ配信が聴けるようになった……と言っても、それ自体は6年以上前からQobuzが実現していたことであり、今さらいちいち大騒ぎするようなことではない。
一方で、TIDALからもQobuzからも公式には締め出され、かろうじてTIDALに関しては使い得るという状況に置かれてきた日本のオーディオファンにとっては、TIDALがロスレス/ハイレゾ配信を始め、オーディオ機器でそれを聴けるようになることは素直に喜んで然るべきものだろう。……と言いたいところだが、来月には日本でQobuzがサービスインするという状況なので、これまたいちいち騒ぐほどのものかは微妙。
とりあえず、TIDALが長年続いたMQAとの関係性を見直して始めたFLACによるロスレス/ハイレゾ配信が、予告通り次のステージに到達したことは確かである。
そして、LINNの「DS」というプラットフォームの素晴らしさを、あらためて実感する機会となった。