【レビュー・空気録音あり】SPEC RMP-UB1SFP - Direttaの可能性を広げる「LAN DDC」

 DirettaはSFORZATOのネットワークプレーヤーが最初に対応し、「LAN DAC」の可能性をおおいに見せてくれたが、SFORZATOに続くDiretta対応のLAN DACは今に至るまで登場していない。

 また、Direttaの出力に対応する製品/Diretta Hostも、オーディオ機器としてはfidata/Soundgenicと最近対応したPachanko Labs以外になく、全体としてDirettaの普及や浸透が進んでいる状況とは言い難い。もっとも、Diretta HostについてはWindows PCがその役割を担えるので、実用上そこまで問題ではないのかもしれないが。

 「LAN DACが出てこない」と書いた一方、Direttaの入力に対応する製品/Diretta Targetとして「LAN DDC」というアイデアの製品が登場している。オリオスペックの「Diretta Target PC」と「Diretta Target Pi」、そして今回取り上げるSPECの「RMP-UB1」である。
 

「Diretta USB Bridge」について

 オリオスペックの2機種と、SPECのRMP-UB1は「Diretta USB Bridge」、つまりLAN/Diretta入力をUSB出力に変換する「LAN DDC」として機能する。製品バリエーションの豊富なUSB DACを使いつつDirettaの恩恵を受けられる、というのがDiretta USB Bridge/LAN DDCのアイデアである。確かに良いアイデアであり、幅広い製品/システムでDirettaの活用が可能になる。

 ただし、RMP-UB1のようなDiretta USB Bridge/LAN DDCと、Direttaに対応するDAC搭載ネットワークプレーヤー/LAN DACは、どちらもDirettaの仕組みを使っているとはいえ似て非なるものである、ということを理解しておく必要がある。

 RMP-UB1のレビューに先立ち、まずはその部分について述べる。

 
 
 下図①②は、Direttaに対応するUPnPベースのDAC搭載ネットワークプレーヤー(とりあえずSFORZATO製品だと思えばよい)を、そのままプレーヤーとして使った場合と、LAN DACとして使った場合のシステム図である。「サーバー」や「プレーヤー」といった要素についてはこの記事を参照。
 


 
 Direttaがどのように音質上のメリットをもたらすのか、DAC搭載ネットワークプレーヤー/LAN DACにおいてはよくわかる。ネットワークプレーヤーから「プレーヤー」という本懐を奪ってなお音質上のメリットをもたらすあたりに、Direttaの凄さがある。

 
 
 それでは、Diretta USB Bridge/LAN DDCではどうなるのか。

 下図③④は、USB DACをそのままプレーヤーに繋ぐ場合と、Diretta USB Bridge/LAN DDCを挟む場合である。


 
 ①~④の図からわかるように、「Diretta USB Bridge/LAN DDCを使ってUSB DACに接続する場合」は、「DAC搭載ネットワークプレーヤーをLAN DACとして使う場合」にあった「Host側に再生を担わせることでネットワークプレーヤーの負荷が下がる」という要素が存在しない。また、USB変換が行われるためDAC自体はDirettaで繋がらない

 DAC搭載ネットワークプレーヤー/LAN DACと、Diretta USB Bridge/LAN DDCは、どちらも「Diretta Target」という点で同じでも、システムトータルで考えれば、「使うことで何が変わるのか」という点で同じではない。ゆえに私は似て非なるものだと表現している。

 
 なお、SPECはRMP-UB1について、「源流の情報クオリティー向上でDACデバイスの動作SNを改善」と説明している。


画像出典:https://www.spec-corp.co.jp/audio/RMP-UB1/index.html

 「プレーヤー」の所在は変わらず、DACの前でDirettaからUSBに変換されるとしても、Direttaによる処理の平均化は音質上のメリットをもたらす、というのがRMP-UB1をはじめとするDiretta USB Bridge/LAN DDCの考え方になる。

 
 以上のことを踏まえたうえで、あとは実際に使ってみて、どうか、である。

製品概要

 というわけで、RMP-UB1。

 Audio Renaissance OnlineAudio Renaissance Online 2021 Springでも紹介されているので、そちらも是非。










 RMP-UB1はDiretta入力をUSB出力に変換する、Diretta USB Bridge/LAN DDCとしての機能はオリオスペックのDiretta Target PC/Piと基本的に同じで、筐体や電源といった部分にこだわり、徹頭徹尾オーディオ機器として作られた製品ということになる。

 RMP-UB1はRJ45ポートを搭載する通常モデルにくわえて、光LAN接続が可能なSFPポートを搭載するモデル(RMP-UB1SFP)が用意されている。価格は通常モデルが272,800円、SFPモデルが316,800円。通常モデルの購入後にSFPモデルへの変更も55,000円で可能。

外観・仕様




 RMP-UB1の筐体はSPECのお家芸ともいえるアルミと木材(スプルース)のハイブリッド構造となっており、サイドパネルとインシュレーターに厚みのある木材が使われている。サイズは350mm(幅)× 95mm(高さ)× 164mm(奥行)で、奥行は小さいが横幅があるのでラックの隙間に置くというのは難しいと思われる。重量は3.8kgとなかなかにある。

 



 フロントパネルのSPECロゴは電源オンで赤、USB DACを認識すると橙、再生が始まると緑に点灯する。

 

 背面。今回お借りしたのはSFPモデルなのでSFPポートを一系統と、USB出力を二系統搭載(両方から同じ信号が出力される)。USB入力は将来的に対応予定のDiretta Hostとして使う際に使用する。

 

 SFPモデルには光モジュール×2と光ファイバーケーブル(1m・3m・10m)が付属し、それらを別途用意することなくすぐに光LAN接続が行える。RJ45モジュールも付属するため、「いずれ光で繋ぎたいけど当面はLANケーブルで」という使い方もできる。

 

 Windows用ASIOドライバーの設定画面。接続先を確認できれば、特にすることはない。

 同社製USB DAC「RMP-DAC1」との組み合わせでは、PC・fidataともに接続で不安に感じるところはなく、RMP-UB1SFPの挙動や動作は終始安定していた。

 試聴に際し、ハイレートのPCMからDSD256に至るまで再生で問題が起きることもなかった。以下はRoonを使ってPCM 384kHz/32bitとDSD256を再生しているの図。

音質

 RMP-UB1SFPの試聴は「Host」にfidata HFAS1-XS20を使い、「Target」にSPEC RMP-DAC1を使うシステムで行った。今回は同社製品の組み合わせとなったが、もちろんRMP-UB1/RMP-UB1SFPは幅広いUSB DACとの組み合わせが可能である。

RMP-DAC1
今回のシステム

 
 
 まずはRMP-DAC1の音の確認もかねて、HFAS1-XS20からUSB直結で聴く(これをAとする)。


 
 
 RMP-DAC1は中低域にボリュームのある、落ち着きのある音というのが第一印象。

 パッと聴いた時の目の覚めるような感覚や派手なところはないものの、解像感や情報量といったDACとしての基礎能力はじゅうぶんに高い。なにより耳当たりが良く、不快なところを感じさせない出音は本機の大きな美点であり、心地よく音楽に浸っていられる。
 
 
 
 続いて、RMP-UB1SFPを入れる(これをBとする)。


 
 
 Aとの比較では、まず「一聴して音が大きく聴こえる」。これは端的に言って情報量の顕著な増大によってもたらされる感覚であり、かつてDSP-DoradoをLAN DACとして使った際に感じたのと同じもの。
 

 
 Corrinne May「Little Superhero Girl - Acoustic Edition」では、曲冒頭のピアノからして粒立ちに大きな変化が感じられ、ボーカルも明瞭さを増す。低域の輪郭描写と沈み込みの改善も見られる。「まったり」ではなく「真剣に」聴く方向への変化である。
 


 Tingvall Trio「Pa Andra Sidan」では、DACの耳当たりの良さを残しつつ上にも下にもレンジが伸び、特にピアノのアタックから曖昧さがなくなって鮮烈な印象となる。曲終盤に繰り出されるドラムの連打も実在感において明らかに別物。ディテールの描写にも相当な改善があり、全体として情報量の増大に繋がっている。

 

 Yes「Roundabout - Steven Wilson Remix」では、全帯域、特に低域の解像感に大幅な向上が得られる。ベースの輪郭がぶれずぼやけず、低域の存在を曲中で克明に追えるようになるのはオーディオ的な快感である。細かく、かつアタックが必要とされる音、まさにドラムなんかは存在感が著しく増し、この印象は「Pa Andra Sidan」と共通する。

 

 大植英次(指揮)「コープランド:市民のためのファンファーレ」では、空間が特に奥行き方向に広がり、より深々とした音場が得られる。音の消え際の描写も繊細さを増す。この曲も含め、RMP-UB1SFPで得られるのは直接的なエネルギー感の向上や、音が前に張り出してくるといった類の変化ではないようだ。
 
 RMP-UB1SFPを使うと、総じて個々の音が磨き込まれて曖昧さが消える方向で、情報量の増大もあいまって「オーディオ的な凄味」が増す。ともすれば「穏やか」ないし「おとなしい」と感じられるRMP-DAC1に好ましい鮮烈さが加わり、音楽がより生き生きと再生されるようになる。それでいてUSB直結で聴いたRMP-DAC1の美点、耳当たりの良さやスムーズさは損なわれておらず、RMP-UB1SFPの導入によってマイナスになる点は特に見当たらない。

まとめ

 繰り返しになるが、同じ「Diretta Target」であっても、システムトータルで考えれば、DAC搭載ネットワークプレーヤー/LAN DACと、Diretta USB Bridge/LAN DDCは似て非なるものである。

 それを踏まえてもなお、SPEC RMP-UB1SFPは確かな効果を発揮した。しかも、LAN DACに感じるのと同様の音質向上を、Diretta USB Bridge/LAN DDCでも感じられたのには驚いた。システムとして違いがあっても、同質の結果になるというのは興味深い。

 今回RMP-UB1SFPがもたらした音質向上はDirettaだけに起因するものではなく、むしろ筐体や電源といったアナログ的な作り込みに拠るところが大きいと思われ、単に「Diretta USB Bridge」と呼ぶよりは「Direttaを活用したUSBエンハンサー」的な呼び方の方がしっくりくる。

 
 「Direttaを活かすならLAN DACに直結してナンボ」という私の考えは今でも変わらない。とはいえ、現時点でDirettaに対応するDAC搭載ネットワークプレーヤー/LAN DACがSFORZATO製品以外に存在しないことは確かで、この考えに執着したところでDirettaが活躍する機会は増えない。

 それならば、LAN DACとLAN DDCの違いは違いとして理解したうえで、後者も含めてDirettaを活用していくべきなのだろう。その点でRMP-UB1/RMP-UB1SFPはDirettaに期待される音質上のメリットを幅広いUSB DACにもたらす、「Direttaの可能性を広げるLAN DDC」だといえる。

レビュー環境

DELA S100 + EL SOUND アナログ電源5V4A
 ・10Gtek 光メディアコンバーター(Wi-FiルーターとS100の間を光アイソレーション)
 ・SONORE opticalModule Deluxe(S100とRMP-UB1SFPの間を光アイソレーション)
fidata HFAS1-XS20(USB出力/Diretta出力ミュージックサーバーとして使用)

◆SPEC RMP-UB1SFP
◆SPEC RMP-DAC1

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